皆川博子著
「巫女の棲む家」
「妖かし蔵殺人事件」拝読。
長編推理コレクション2です。
ともに80年代後半に書かれたもの。
興味深いことに、皆川氏は
少女の頃、医師だった父親が
霊的なことに傾倒しており
巫女的な役割を降霊会でやらされていたと
いうことです。
そこでの葛藤を含めて
かなり実際の経験がもとになっている
小説なのです。
戦後に心を壊した兄。
自分の心が書かせたのか霊の導きで
書いたのか分からなくなってくる
自動書記。
医師なのに霊に固執する父親。
姉を戦地で見殺しにしたイカサマ
降霊師。
なんとも魅力的でした。
「妖かし···」のほうは
歌舞伎役者の失踪、自殺が
軸になっていますが、江戸末期の
名俳優「田之助」の「首」まで出てきて
歌舞伎好きとしてはたまらない設定。
役者が失踪する舞台の演目は
本水を使う「鯉つかみ」。
確か松本幸四郎さんが
染五郎時代にロスの野外で
やった演目ですね。
昔の芝居小屋の仕掛けについても
描写が多く、とくに
天井からの照明は蝋燭を吊るのですが
それは「瑠璃灯」と言うのだそうです。
なんと幻想的な呼び名でしょう。
こんな言葉を知ることも出来るから
皆川博子は愉しいのです。
DJ KAZURU
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