「風よあらしよ」
村山由佳 著 拝読。
伊藤野枝ってずっと気になる人
だったので、この本を手に取っていました。
野枝って名前もいいよね
自らが「ノエ」に当てた漢字は
華やかさに背を向けたような
でも強さを感じます。
大杉栄と活動した
アナーキストくらいの知識しか
ないのですが、学生時代に
「少女椿」の丸尾末広が描いた
この絵を見たからかな?
絵はがき買うほど気に入った
伊藤野枝が甘粕に殺害されるシーン。
この小説でようやく
イメージだけではなく
伊藤野枝の人生に触れることができました。
野枝、野枝の母、最初の夫
大杉、大杉の愛人、大杉の妻
平塚らいてふ、同士たち、と
それぞれの視点から語られる野枝の
人生ですが、甘粕が登場したときは
おおーっいよいよ!という感じで
映画のクライマックスのように
盛り上がってしまいました。
女学校の教師と最初の結婚をして
そこで二児を成し、大杉栄との間には
そのあとに五人子をもうけて
絶命が28歳ですから怒濤の駆け抜けかた。
平塚らいてふの次世代の作家として
まずは活動されていたようですが
まだ10歳代の頃から、「教え子(野枝)と恋愛」の末
無職になった男とその家族まで養い
子供の世話をし、いやもう
なんていう生活かなあと思います。
野枝が特別かというと
そうでもなく
大杉栄の前妻も、しょっちゅう投獄される
夫の兄弟の面倒までみて
お金は出ていくばかり、
浮気もバンバンされるし、まあひどい
ものです。
でもこの時代の女性というのは
夫の庇護で自分の欲望など押し殺し
おさんどんするのが当然ですから
彼女たちもやりきってしまうのですよね。
世に訴えたいことがあり
書く能力があっても、まずは
日常のあれやこれやを引き受ける。
現代の女性だったら絶対に
やりませんね。
ところで大杉栄の自由恋愛の持論は
一、お互いに経済上独立すること
一、同棲しないで別居すること
一、お互いの自由(性的のすらも)を
尊重すること
だそうですが、これって上野千鶴子が
言ってることと同じですね。
理論上は可能だけど、実際
大杉栄も恋人に刺されているし
上野千鶴子も惚れた男が自分以外の女性と
関係してると、咎めはしないが
さめざめと泣く、と
言っていますから難しいものですね。
村山由佳氏は、大杉のずるさも
野枝の女に手厳しいところも
すっかり描いていてさすがです。
野枝が
「有島武郎ともあろう男があんな
人妻にひっかかって心中なんて勿体無い。
相手がつまらない女なのは彼女が夫に宛てた
大甘の遺書を見ればわかる、自分に
酔ってるだけ」
と、バッサリ
言い切ってるシーンは思わず
吹いてしまいました。
DJ KAZURU
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