皆川博子 著
「夜のリフレーン」拝読。
1970年代から最近のものまで
短編を集めたもの。
装丁も美しく
幻想的な内容にぴったりです。
皆川氏によると
小説誌に掲載された短編などは
いくらでもある。
雑誌を保管しないし
一度掲載されたものは原稿も処分しちゃう。
というわけで、作者のなかでも
消えかかっていた作品群を
編集者が頑張って
かき集めたという次第なのですが
完成度の高いものばかりで
びっくりします。
特に好きなのは
芝居小屋での殺人事件をめぐる
「赤姫」。
どさ回りの役者たちを迎えてきた
白粉、人いきれ、楽屋風呂の湿気・・・
芝居小屋の匂いがただよってきそうな
描写は皆川作品ならではです。
フェティシズムを
幼い子供の残酷な執着心で
彩った
「新吉、おまえの」や、
雛飾りと盲目の母の関係に秘められた
思い出が解き明かされる
「七谷屋形」も秀逸。
また人形作家
中川多理氏とのコラボ的作品も収録されており
贅沢な一冊です。
現実には飽き飽きするような
ことばかりでも、
皆川博子の作品を読んでいると
人間の世界ってなんて
魅力的なんだろうと思います。
たとえ
背筋が凍るようなものであっても
その美しい地獄に身を投げてみたいという
衝動が生まれます。
DJ KAZURU
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