「藝人春秋」
水道橋博士 著、拝読。
「2」を先に読んだのですが
話芸と筆致が一緒になったような
書きっぷりがあまりにも面白かったので
「1」のほうも。
たけしの話もテリー伊藤の話も
まあ見事に書いてるのですが、
ぐっさり心に
残ったのは、稲川淳二の話です。
超常現象体験も多く
怪談話の話術で地位を確立した稲川氏ですが
次男が生まれる前に海外の霊能者に
見てもらったら
「重病で生まれてくる」と
言われたそうで、その後
本当に難病の子が生まれた、と。
全然知りませんでしたが
生まれたばかりで、もう大きな手術を
受け包帯ぐるぐる巻きになっている
我が子を衝撃的に受け止めつつも
生かしてあげたい、この子は頑張ってる
と、思ったということです。
そして、自分の身に何が起きても
TVで笑っていなきゃいけない人生に
疑問が出た、と。
これは芸人が抱える
本質的な苦悩だと感じました。
親が死んでも舞台に穴を開けない
というのは責任として理解できますが
我が子が小さな命で震えているときにも
下らない話してヘラヘラするのか
という問題ですね。
水道橋博士は、多々芸人を
書いてきて、人の病気や
哀しさに焦点を当てた稲川淳二の話を
持ってくるのはどうか、と
掲載にあたり悩んだそうです。
このエピソードがもっとも
読者の心に残ってしまう、それが
本流から外れやしないか、と
危惧したのでしょうが
掲載して正解だと思います。
私たちが知りたい
「芸能人のホントのところ」というのは
善人面のうらで不倫相手と逢瀬してることや
副業で儲けてることなんかではなく
この人が結局は何に動かされてるのか
という点なんです。
そんな意味で
水道橋博士は、芸能人の
真実を書くことに成功してる人。
ご本人は高校に入ったとたん
引きこもって、そのまま4年くらい
経過したという経歴ですが
その間何をどうやって身につけたの?
ってくらい
侮れない書き手ですね。
DJ KAZURU
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