「赤線本」
渡辺豪 監修、拝読。
令和の御代ともなりますと
赤線についておおっぴらに語る人など
いないわけですが、昭和までは
実体験として知ってる人が
当たり前にいたのですよね。
永井荷風、舟橋聖一、井伏鱒二
文豪と今では
呼ばれている人も
国民的俳優も、みんな
赤線を経験しており、詳しい人は
「凄いですな~」なんて
言われもした。
ここにはそういった文化から生まれた
小説、歌詞、随筆、対談が
おさめられており、こういうものが
日本にはあったんだなあと改めて
感じ入りました。
芝木好子の小説などで
わたくしも親しんでいたジャンルですが
選りすぐりのものを
集めてあって、非常に面白く読みました。
高倉健が、学生の頃
赤線のお姉さんとの
ふれあいを書いたエッセイ
「赤いガラス玉」など
こんなに赤裸々でいいのか? と
驚くような正直さです。
センチメンタルな情景が綴られており
若い男は憧れをもって
見つめていた場所だとわかりますね。
一方
ちあきなおみが歌った
赤線ものとしては
「朝日楼~陽のあたる家」が有名ですが
映像で見れば、悲惨な人生の底辺に
たどり着くしかなかった
女の悲しみに満ちた表現に圧倒されます。
ここには
「ねえあんた」の歌詞が収録
これも悲しい一篇。
この国が率いた制度に
今さらなにも言えませんが
無かったこと、にしては
いけません。
悪所であろうと、忘れたいものであろうと
ここから多くの物語が生まれたことは
間違いないのです。
DJ KAZURU
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