天童荒太 著
「ペインレス、私の痛みを抱いて(上)
あなたの愛を殺して(下)」
拝読。
肉体的な痛みを
感じなくなってしまった男と
心が痛まない女の物語。
いつも人間の根本を見つめるテーマで
小説を書く作者ですが、無痛症だけでなく
心が麻痺した人間の問題を
取り上げるとは面白い。
心が痛まないから
どうしたら普通の人間と同じような
「胸の痛み」得られるのか、を
模索するうちに家族を殺してしまった
人間もいれば、冷静に自覚して
その源を探っていく人間もいる。
主人公の女医がなぜ
特殊な人間として生きているのか
その、母の物語、祖父母の物語が
重層的に語られる構成も良いし
痛みを感じなくなった男が
外国で経験した暗い過去を語る仕組みも
素晴らしかった。
天童荒太は、主人公の日記を
実際に書いたりして人物造形を
深めると聞いたことがありますが
この作品も丁寧に書かれています。
印象に残ったのは
死期が近い老夫婦から語られる
ある青年との出会いから始まった
不思議な青春時代の挿話で、こういう
寓話のような
エピソードがはさめるのも
作者の魅力的なところです。
DJ KAZURU
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