宮本輝 著
「流転の海」全9巻読了。
新潮の連載で見かける度に
ちょいちょい読んだりはしてましたが
最初から通読したのは三年前くらい。
この度、すべて文庫化しました。
三十七年間に及ぶ連載ですからね
巨大な物語の海です。
作者いわく
「ひとりひとりの無名の人間のなかの
壮大な生老病死の劇」
です。
松阪熊吾という不思議な魅力を持った
男が、ふいに50才にして子を持ち
戦後様々な人と交わり
事業に成功も失敗もし
命尽きるまでの物語。
色々な人物に自分を重ねることもできるし
人の業というものを
見せつけられる。
戦後を語る側面もあり
日本人みんなの物語ともいえる。
二巻、三巻、と
発売される度に最初から読み返す
人も多いようで、私もこれを期に
もう一度
通読したいものです。
男も女もよく描かれていて
魅力的な登場人物がいっぱい。
各巻それぞれに印象深い
エピソードがあるので
味わい返したいのです。
私が、この物語に強くひかれたのは
宮本輝が好きであるということと
もう一点。
舞台の大方が、大阪福島西通交差点
付近であるということでした。
わたくしは2005年前後
約五年間、この地で過ごしたのです。
もちろん景色は大分変わったでしょうが
そこから大阪駅まで行く途中の
桜橋付近や、最終巻に登場する
フランス料理店ラフィエットがある北浜。
建てかわる寸前の大阪第一ビル第二ビル
のあたり・・・
実際に歩いていた場所なので
距離感が手に取りようにわかり
大変親しみをもって読んでいました。
それにしても
作家が自分の半生を捧げて
ひとつの物語を書くというのは
なかなか出来ることではないです。
とんでもない力量です。
この素晴らしい作品は日本の
文学の歴史に残るものです。
折を見て、山ほどある
「流転の海名言」でも
まとめてみたいですね。
DJ KAZURU
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