和漢朗詠集は、下巻の目次が
むしろ素晴らしいのです。

・・・

風、雲、晴、
暁、松、竹、草、
鶴、猿、管弦付舞妓、
文詞付遺文、酒、
山、山水、水付漁父、
禁中、古京、故宮付破宅、
仙家付道士隠倫、
山家、田家、隣家、
山寺、仏事、僧、閑居、
眺望、餞別、行旅、
庚申、帝王付法皇、
親王付王孫、丞相付執政、
将軍、刺史、
詠史、王昭君、妓女、
遊女、老人、交友、懐旧、
述懐、慶賀、祝、恋、
無常、白

・・・

流れを絶ちきらず、かつ
単純な連想にとどまらない。

凡庸でなく
風景のうつろいや
人生の局面を思い起こさせ
最終的に
この世の真実を突きつけられるような
目次です。

こんな見事な
歌謡集の作り方ってある？

編者の藤原公任《966-1041》は
名門貴族出身ながら、権力が
藤原道長に移ったので
政治の座から降りて、芸術文化の
リーダーとして地位を得ていたとのことです。

平安時代は、教養の高い人間が
尊敬された時代といえますね。

実際、宮廷で働く女性たちも
漢詩や和歌の知識をもって男たちと
気の効いたやり取りができないと
「使えない人」とバカにされたそうですから
こういう定番が収められた歌謡集は
押さえるべき一冊だったのでしょう。

平安後期から和漢朗詠集の
注釈本はすでにでて、その後も
江戸期に至るまで
たえず写本や注釈本が出回り
「源氏物語」や「古今集」より
ずっと多く
写書されたということです。

2000年代にこれを
読んでる人はめっちゃ少数でしょうが
各章の分け方、そこに
掲載するものの選び方は
「センス」として
学んでおくべきもののように感じます。

現世を眺めたとき
藤原公任のように
人を、季節を、心を
感じることができたなら。

少なくともわたくしたちは
下等な生き物ではないですよ。

DJ KAZURU