金原ひとみ 著
「アンソーシャルディスタンス」
拝読。
コロナに就職活動とか
卒業旅行とかの時期がぶつかってしまった
若い人たちって本当に気の毒だなと
思っていますが、その渦中の
カップルの話です。
希望の会社が採用を見合わせたことも
彼氏の母親が彼女を気にくわないことも
二人の間に授かった子を中絶したことも
なんとか受け止めてきた二人ですが
楽しみにしてきたライブの中止の
知らせでぷっつりと
糸が切れたようになってしまう。
人気バンドの定員200に満たない
ライブハウス公演を当ててたとなると
その中止がショックなこと
良くわかります。
これを楽しみに生きてきたのに
という思いは大袈裟ではないでしょう。
それによって、彼女は
子供の頃から抱えてきた
希死念慮を大きくし
「心中」とまで言う。
ふたりの道行きは、結局
現状に飲み込まれていくのだけど
この世界的な不安を
人生開き直ることも出来ない
若い人たちがどうやって
泳いでいくのか
垣間見せてもらったような気持ちです。
収録作品の
「テクノブレイク」は、やはり
コロナが始まったことで
潔癖を徹底しだした女と
それを滑稽と笑う男がすれ違っていく
ストーリー。
それまで食の嗜好と
セックスの相性で、強い結び付きを
感じていた二人が、あっという間に
別の人種に分断されてしまう。
女はセックスに執着し
どうにか男を取り戻すため
消毒の習慣も捨てようとするが
まったくうまくいかず
男は去っていく。
「その1」の作品も含め
どの主人公も過剰に
何かを摂取していくことが止められない。
息をするように飲む酒、
美への執着、
自殺願望、
渇望するセックス・・・
すべて自分で選びとっているようだけど
まったく自分をコントロール出来ない
人たちが、この社会で
叫びもあげられずに
壊れていっているような、
戦慄を覚えました。
DJ KAZURU
Add A Comment