
雪華葬刺し(せっかとむらいざし)
赤江瀑 著、拝読。
赤江瀑は、市場に多くは
出回っておらず、したがって
まとまって読めるものが
少ないのです。これは2021発刊の
アンソロジー。初出1975年の短編です。
何度読んでも
物語の美しさと残酷さに
心が震えます。
刺青は誰かに見せびらかしたり
写真に撮るものではない。ただ
墨を入れた人間が、一生一人で
背負うて行かなければならない、という
独自の論理を持つ彫り師。
そこには並みならぬ想いと決意で
彫って欲しいという男女が
命のやり取りをするかのような
気迫で訪れる。
特別なやり方で
彫りを進めていくわけですが、最後に
ことの顛末を一緒に乗り越えた弟子の
男にわずかのスペースに
彫らせてやってくれと言われる。
弟子の男が
左の脇の下、腕を下ろせば
乳房の膨らみとの間に
完全に隠れる場所に雪の結晶の
図案を彫り、そこで
すべての作業が終わりとなる。
ただ、彫り師は
自分が死んだら最後に一刺しさせてくれ
それで本当に完成だと謎めいた
言葉を残し、その通り
訃報と共に彫られた者たちは
最後の「葬刺し」のために
彼の初七日に集う。
誰が「葬刺し」をするのか、も
謎ですが、彫り師と弟子の因縁を
めぐる物語は
刺青のもつ魔力めいたものの
仕業というにはあまりに悲しいものです。
悲しいと思いつつも
そのあまりの美しさを
享受することが嬉しくなる。
作中、国芳の絵をもとにした
図案を背にいれた人たちは
その道を行くことを選ばれし者ですが
この物語に浸れる自分もまた
選ばれし者のような快感があります。
赤江瀑作品には、そういった
名作が多いのです。
DJ KAZURU
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