まずは竹宮恵子の
「少年の名はジルベール」を
読む必要があるのですが(こちらに
私の感想あります)、
これには
思春期の少年が主人公である
少女漫画における二巨頭といってもいい
竹宮恵子、萩尾望都が
20才駆け出しの頃の2、3年を
共に暮らし切磋琢磨していた
青春秘話が明かされていました。
竹宮本の出版で二人の関係にスポットが当たり
ドラマ化の話まできたということですが
よくわかります。
取材が殺到して困惑した萩尾側のアンサーが
この本「一度きりの大泉の話」なのです。
が、なんと
萩尾望都は二人が同居を解散したときから
50年、竹宮恵子の漫画を
読んでいない(あの名作「風と木の詩」も!)
会ってもいない、「少年の名はジルベール」も
送られてきたが未読で返送したというのです。
今も並べて語られることの多い
この二人に、何があったのかと
びっくりしました。
簡略化して言えば
竹宮が嫉妬というか焦りから
ストーリーの剽窃を言い出し
絶縁状を叩きつけ、それに全く
心当たりのなかった萩尾が
眼が見えなくなるほどの精神的ショックを受け
以来竹宮も彼女の作品も遠ざけたということです。
二人の周囲には
どちらの本にも登場する
竹宮のブレーン的な女性、また
多くの後にプロとなった「漫画家志望」の
女性が大勢集まっており、もうこうなったら
二人に近しいみなさまの
それぞれの証言も聞いてみたい!と
思うのはこの二作品を読んだのなら
当然の欲求でしょう。
竹宮恵子も萩尾望都も歴史に残るような
漫画を書きました。しかし
その裏にあった真実のなんと
切ないことよ。
これは萩尾側から出された
50年後の絶縁状返しでもあるわけです。
それにしても竹宮恵子は
萩尾望都に出した手紙の一件を
本当に忘れたのでしょうか。
50年を経て「単なる行き違い」と
過去を書き換えられると思ったのか。
老いを前にして
なかったことにできるなら
そうしたい、という希望のもとに
自叙伝的な本を書いたようにも思われます。
そしてこれを読んで私は
我が身を省みて
自分にも誰かをめちゃくちゃに傷つけて
そっとそのことに蓋して、ついには
忘れてしまうようなことが
あったのではないか、と
不安になりました。
「人の心はわからない」
けれど絶対に忘れていけないことは
あるような気がします。
それを忘れていたらと思うと
恐ろしいです。
DJ KAZURU
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