「残酷な神が支配する」7-10巻拝読。
一度抱えた痛みは同じような
痛みをもて余す人間を呼び寄せるようで
いよいよ登場人物も増え、彼らの
多様な痛みが明らかになってきました。
生け贄がいなくては
「幸せな家庭」は成り立たないのか。
誰かが安寧に暮らすためには
誰かの犠牲が必要なのか。
他者に寄り添うことは
自己満足でしかないのか。
救いってそもそも何?
こんなに難問を突き付けてくる
少女漫画ってあるでしょうか。
この作品より20年前に発表された
竹宮恵子の「風と木の詩」は
父との性的な関係に溺れ
その悪のプールのなかで嬉々として
泳ぎ続ける少年が主人公が魅力的な
傑作漫画ですが
比べると「風と木~」は
おとぎ話のようなもので
痛みの本質をえぐり出すものでは
なかったような気がします。
最終的に何事もなかったように
生まれ変わるというような
救済はなかった。
けれど心の再生の過程を
丁寧に描く物語の深さに圧倒されました。
比べるなら「赤と黒」とか
「カラマーゾフの兄弟」とか
そういう読み継がれている
大作小説がふさわしいのですが
日本の漫画にも壮大な
ビルドゥングスロマンがあった、と
言うのが
ぴったり来るかもしれません。
DJ KAZURU
Add A Comment