「赤江瀑アラベスク2 魔軍跳梁」
拝読。
冒頭を飾る「花曝れ首」がまず
傑作中の傑作なのですが
今回は初めて読んだ京都ものの
幾つかにぐっと心ひかれました。
「緑青忌」は
公家の双子の姉妹の家で起きた
事件が語られますが、明治から大正期に
宮中にあがって
勤めていた双子の言葉遣いの
ひとつひとつが不思議で面白いのです。
また、娘が闖入者の狼藉を受けて
悲しむどころかその男が忘れられないとか
子を産んだとか、男の彫り物に
執着するとか、まるでこれは
歌舞伎の「桜姫東文章」。
作者は間違いなく「桜姫~」が
好きだと思います。
パスティーシュ大成功という感じです。
もうひとつは「隠れ川」。
京都の料亭を営む
家の自宅に描かれた襖絵にまつわる
女の一念をテーマにした短編です。
30年前に女将に請われて
芸術院賞をとるような幼馴染みの
女流画家が家中の襖に墨で描いた
帯のような
一本の線のバリエーション。
老境の女将はずっと
この見事な筆が示すのは、料亭の名前
「千川」にちなんだ川、千の川を
描いてくれたのだと思って感謝している。
が、
女将の臨終の間際に画家は
あれは川なんかじゃない
道成寺の蛇に身を変えた清姫だと囁く。
その一言で、今は亡き
料亭の主人と画家が
かつては男女の仲だったと
わかる仕組みです。
ぞっとしました。
こんなにホラーなことって
あるでしょうか。
とにかく赤江瀑はすごいのです。
こんな短編を幾つも残してるんですから。
DJ KAZURU
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