
「わたしのなつかしい一冊」
池澤夏樹編、拝読。
書評というのは
新刊を売るためだったり
業界活性化のために行われたり
する事が多いのだけれど、経済に関係なく
いい本を薦めたい、という
動機で書かれるものも多いわけで。
そういうものの中には
一冊の本を紹介する形ではあるけれど
ストーリーをこえて
その時代の社会的問題や、作者の
人物像に深く迫るものもあり
更には書評してる人の仕事ぶりや
人となりまで見えてきてしまうものがあって
・・・それが本当に短い文章に
収まってることもあるから
面白いものです。
その本のその文章にであったから
生き方が変わった、ということを
書く人もいて、例えばそれがお気に入りの
役者や歌手の書くことだったら
ぜひその本を読まねば、と
なるわけです。
ここには学者、作家、アナウンサー
いわゆる知識人から世相を斬る
エッセイまで色々な人が
ごく短い文章で「私の一冊」を
紹介していますが、「いまの気分」ではなく
これまでの人生での「なつかしい一冊」
ですから、なかなか読みごたえがあります。
有名作品も、未知の一冊も
思い入れがある一冊ですからね。
池澤夏樹氏に
自分が指名されたときには(想定・・・)
これぞという文章が書けるような
人生でありたいものです。
・・・
良心は誰もが持っているが
自由をタダでくれる支配者はいないので
戦って勝ち取るしかない。
比較的若い頃にそれを
悟ることができたのは「聖書」よりも
「イエスという男」のお陰である。
島田雅彦選
「イエスという男」田川建三著
・・・
アシェンバハは
「ものの根源と神々の誕生とについて
物語る詩人の言葉のよう」に美しい
少年に魅入られ、死の渦中へと
足を踏み入れてゆく。(中略)
ひたひたと迫ってくる疫病の前で
無力に立ちすくむアシェンバハの姿を
誰も哀れと言って切り捨てることはできない。
優れた文学は必ず、作家の意図を越えて
未来とつながっている。
そのことを今、証明している小説だ。
小川洋子選
「トニオ・クレーゲル
ヴェニスに死す」トーマス・マン著
・・・
DJ KAZURU
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