「越後つついし親不知」
水上勉 著、拝読。
短い小説だけれど
貧乏な雪に埋もれた土地で
わずかな日銭のために
菰あみに精を出す女の生活、
杜氏に出稼ぎに出て家族のために
肉体労働をする男たちの悲哀が
すっと入ってきて、見たこともない
越後の雪深い風景が
寒さと共に肌で感じられるようです。
昭和37年に発表された作品ですが
雪国の貧しい暮らしは、けして
遠い感覚ではなかったのでしょう。
仲間の若いお嫁さんを
踏みにじってやりたいという男の気持ちは
一過性のもののようでありながら
仲間の出世を妬む心から、むくむくと
肥大していき、ついに女を死に至らしめます。
女の死因に疑問を抱いた警察が
墓を掘り返し棺を開けたとき
嬰児が臍の緒を絡ませながら
女の股間で死んでいた、という
ラストは衝撃的すぎて
読みながら目を見開いてしまいましたが
まったくなんというインパクトでしょう。
実際に死んだあとに出産、つまり
棺内分娩というのは
不可能と思われますが、夫への
一途な想いを踏みにじられた
貧しい女性の執念とも怨念とも思える
描写に圧倒されました。
この小説は映画化されて
大ヒットしたそうですが、今は
廉価な文庫本も手に入りにくくなり
探したところ、全集で読むことができました。
DJ KAZURU
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