西村賢太「蝙蝠か燕か」
拝読。
私小説作家って
現代に居場所あるのかな?
西村賢太の芥川賞受賞時に
抱いた感想ですが
「苦役列車」を大変楽しく読んだ
自分としては、ずっと活躍してくれて
嬉しい限りです。
西村賢太が敬愛する
藤澤清造の全集やら復刊やらに
奔走している日々が書かれているのですが
時々テレビにも出演してたことは
「全集と伝記作成の資金や
資料代稼ぎの為だけの男芸者のつもり」
と、あり
基本的に藤澤清造のことと
自分の小説に身を捧げてはいるようです。
一方
相変わらず、女性にたいして
なかなかのクズっぷりを発揮、また
大好きな作家、田中英光の子供に酒の席で
暴力を振るうなどダメ人間な部分も
相変わらず。
正直、隣にいられたら
困ったなあとなる人ですが、
ダメなところを迷わず吐露しているのが
読者としては憎めません。
この人の作品を読んでいると
声に出して笑ってしまうようなことも
しばしばです。
なぜか
可愛いげがある、と感じてしまいます。
新潮社の編集長と
そりが合わなかったことを
「編集長とかいう権威主義の小男との
確執が因で、長きに亘って同社とは
没交渉が続いていた。
全く、小男に権力は禁物である」
と、書く辺りなど
まことに子供のようでかわいらしい。
自分の進行見積もりが甘かったために
人任せにしてしまった仕事が
きちんとやってもらえなければ
怒りでいっぱいになるし、また
ファンが藤澤清造の命日の墓参に来たら、
「当日突然に現れる”文学愛好者”に
イラついた。これが”藤澤清造愛好者”なら
その参加にイラつく理由はない。
しかし藤澤清造の作は一作も読まずして
単なる例の”新人賞受賞作家による
文学イベント”的な心得でもってやってくる
それらの者の了見に対して腹が立ち、
イラついてしまうのである。」
と思って不機嫌を隠さない。
実に面白い人です。
こんな作家が同時代にいるって
愉快な気持ちになります。
DJ KAZURU
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