「昭和初期、浅草六区の
片隅に建つ芝居小屋。
ここでは夜ごと、ある特殊な条件のもと
集められた少女たちによる
残酷劇が演じられていた。」
という内容紹介にぐっと来ます。
「感応グラン=ギニョル」
空木春宵 著。
新聞で取り上げられていたので
知ることができましたが、初めて読む
作家です。
関東大震災で親を失い
また、虐待により身体を欠損した少女たちの
見世物めいた芝居小屋。
目を潰された、鼻を削がれた
身体中傷だらけ、四肢がない
そうした異形の少女の園。
そこに、身体ではなく
心を欠損した少女が入ってくるのですが
彼女は他者の経験と感情を読み取り
第三者に投影するという
技術を持っているのでした。
「私じゃなくて良かった」、と
誰しもが思うような欠落を抱えた
少女たちの世界って、しかし
「私には得られない」魅力的な
なにかが潜んでいるようで
気になるものなのですよね。
しかし、人の痛みの記憶を
覗くことは、興味でやるような
面白おかしいことなんかではなく
取り返しのつかない
破滅に至る道だよ、と
耳元で囁かれるような、そんな小説でした。
DJ KAZURU
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