「犬神家の戸籍」
遠藤正敬 著、拝読。
横溝正史の原作では
「昭和二×年」10月から12月の
出来事となっていますが
一番有名な市川崑監督1976年映画版では
「昭和二十二年」2月からの出来事
となっている「犬神家の一族」。
この名作をまるごと受け入れつつ
歴史に照らし合わせて
矛盾点を引き出し考察する面白い本でした。
作者は、登場人物の年齢から考えて
昭和24年が原作の時代設定であると
導きだしますが、映画製作側は
横溝正史本人も含め昭和22年で
理解していたということのようです。
仮に昭和22年2月とすると、同年
5月に日本国憲法が制定されたので
まだ明治憲法に準ずることになりますが
そのあとなら法律的に
遺産の扱いが変わるわけですね。
嫡出長男がすべて持っていくか
子供たちに均等に配分されるか。
大きく変化があった時です。
また、幼くして孤児となった
男がどのようにして犬神姓の戸籍を
作ることができたのか、も
興味深い話でした。
ほかにも
GHQが財閥解体指令を出したのが
昭和20年なので、本体
犬神家も莫大な遺産があるわけでは
なかろう、とか
松子夫人は殺人の前に
遺産の遺留分を
主張すれば良かったのでは?とか
考えてみればそうだよなあ、と
思うことがいっぱいでした。
こんな本まで出る「犬神家の一族」は
本当にファンが多い作品ですが
1976年に2億2千万円の制作費を
上回る3億をかけて宣伝した角川春樹の
仕事あってこそだと思います。
あの映像であの音楽で映画を見たから
角川文庫で原作を読みたくなった
そんな人が殆どではないでしょうか。
私もそうです。
まんまとやられて、その後ずっと
横溝正史ファンです。
DJ KAZURU
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