「感応グラン=ギニョル」収録の
「メタモルフォシスの龍」
空木春宵 著、は
恋愛が禁止された世界の話。
なぜなら、恋に破れた女は数ヶ月のうちに
蛇に変異し、男は蛙になってしまうという
奇妙な「病」にこの世界は冒されてしまっており治療の手だてもないから。
半分鱗におおわれた半蛇は
人間だったときよりも、完全な蛇になるよりも
強い肉体を得、恋い焦がれた男を喰うために
執念を燃やす。
強く美しい半蛇のルイに
支えられている主人公のテルミは
半蛇の少女かと思いきや
自分の性を受け入れられない
少年であったことが後半わかるのですが
道成寺「清姫」の物語に
着想を得たストーリーが
実に面白いアレンジになっています。
文章は特に個性を感じませんが
先を読みたい!早く読みたい、と
思う魅力に満ちており、ときめきながら
読みました。
浮気な僧、安珍に焦がれて
蛇になってまで海をわたり
遂には焼き殺した清姫の純情。
現代の清姫が悩むのは
単純な男女裏切り問題などではないのでした。
テルミは、恋に破れた証しに
なんとしてでも蛇になりたい。しかし
男であるテルミは人工的に鱗のタトゥーを
入れても、自らの男性器を切り落としても
蛇になれない。
では何になれるのか。
素敵な幻想小説でした。
DJ KAZURU
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