マーガレット・アトウッド 著
「誓願」拝読。
「侍女の物語」
すぐ隣にあるようなディストピア
が実にいい小説だったので
楽しみにしてた一冊です。
「誓願」は「侍女の~」の後編という感じ。
子供を産むための機械として存在する
「侍女」の苦しみを主に描いた
前作は、ディストピア小説として
ほとんど最高でしたが、今度は
娘たち、社会の支配層の側からも
書かれた物語です。
子供が生まれにくい社会となったので
なんとか子を為すための政策が取られた結果
文字を書くことも、教育を受けることも禁止で
異常なまでに女性の権利が奪われている
徹底した監視社会。
その異常さを正当化するために
聖書の教えが用いられるのですが、聖書は
解釈次第で極論にまで発展させることができる
テクストですから、このあたりが
他人事ではないリアリティとなっています。
窮屈な生活を強いる点では
「緋文字」
緋文字のAはAdulteryのA?
のピューリタン的社会を
思い出させます。
「侍女の~」も「誓願」も
トランプ大統領の出現で再注目され
読まれた本ですが、放射能や温暖化で
生態系がおかしくなっていることも
少子化も我々が身近に感じている問題ですから
女性が管理されているこの設定は
近未来の私たちの姿なのかと
想像してしまうのです。
この物語のなかでは
無能で自己の利益しか考えない人物が
最高の地位についています。
資源の乏しくなった地球で
そんな人間が愚民政策をすすめれば
どういうことになるか、を
アトウッドは提示しつ、そんな社会でも
木偶になって生きることにNOと言う
個々の人間の強さというものも示してくれる。
絶望も希望もある小説でした。
DJ KAZURU
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