「もういちど、あなたと食べたい」
筒井ともみ 著、拝読。
松田優作、深作欣二、久世光彦
森田芳光・・・伝説の人たちと
仕事をしてきた脚本家によるエッセイ。
それぞれの人と食べたものにまつわる
話かと思いましたが、どちらかというと
いかにその人が稀有な存在であったかを
思い起こすように綴られており、作者の
大切な思い出をうかがっているような
気持ちになりました。
まあ、仕事を一緒にすれば
会食の機会など普通にあるわけですが
これぞ、という話を聞き出せるのは
信頼関係がないと、という所でしょう。
岸田今日子と待ち合わせし
駅のホームでみつけたときは
「脱力した風貌」だったのに
声をかけた瞬間
「プワーッとふくらんでいた唇が
蘇ったように口角を上げて、やさしく
微笑んで」いて
何てきれいな女優なんだと思った
というエピソードは
女優の性とでもいうべきものかも。
私がびっくりしたのは
北林谷栄が地方ロケ先で
3歳の娘が沸かしたばかりの風呂の
熱湯に落ちて死んだという
不幸な知らせを受けた時の話。
「私はね、ただ部屋んなかを歩き回ったあと
そばにあった手鏡をつかんだの。
見て確かめたかったのよ。
人間てこんな時どんな顔をするのか」
と、
心臓が止まりそうな迫力で
著者に語ったといいます。
「驚愕と悲しみにうちのめされながらも
女優としての本能がそうさせた」
その通りなのでしょうが
本物の女優とは
なんとむごい生き物でしょうか。
DJ KAZURU
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