江國香織 著
「ひとりでカラカサさしてゆく」
拝読。
元美術系編集者の80歳台の男女三人が
大晦日
東京駅近くのホテルに集っている。
ピアノの生演奏が流れる
バーラウンジ。
ステーキ肉をつまみながら
酒をのみ、過去に担当した
先生方のことなど、楽しく
思い出話に花を咲かせている。
翌日、元旦のニュースで流れたのは
三人の老人がホテルの部屋で
猟銃自殺を遂げたという内容だった。
・・・ここまでの導入部分で
がっちり心をつかまれまして
江國香織も新境地か?と
わくわくしたのですが、これ以降
残された各親族や友人たちの独白が
入れ替わり立ち替わり続いて、読み慣れた
江國香織ワールドでした。
ガンの末期であるとか
経済的困窮が背景にあったとしても
寄り集まって猟銃自殺をする理由には
なりません。ここは最後まで謎でしたが
彼らは死を選ぶ時期にこだわったようです。
三人のうちガンの老人の主治医は
自殺の報を受けて
「病気のことを
よく勉強されていましたから、
タイミングとしては、よく
考え抜かれたという印象を受けます」
と語る。
これ以上治療法もなく
体力的に独り暮らしもできなくなる頃合い。
今死のう、というタイミングを
自分で決定するとはどんな心情でしょう。
タイトルの
「ひとりでカラカサ~」ですが、これは
作中に出てくる野口雨情「雨降りお月さん」
の歌詞です。
嫁入りの情景を歌ったものですが、
お嫁にいくときはひとり。
三人で死んだってやはり
死ぬときはひとりなのです。
DJ KAZURU
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