「おせん」邦枝完二 著
挿し絵、小村雪岱 拝読。
昭和8年朝日新聞連載小説の復刻。
とにかく小村雪岱好きですから
買うよね。
誌面をそのまま再現したような
絵を楽しめるレイアウト。
ちょっとびっくりしたのは、この話
水茶屋で大人気の美女「おせん」が
自宅の庭で行水してるところを
ファンの男が覗いてる
シーンで始まってるのです。
そして結構長く描写が続くと思えば
やはりおせんの魅力にとりつかれた
絵師が縁の下に幾日も潜んで
おせんが縁側で切り落とした爪を
袋いっぱいかき集めたという・・・。
殆ど変態で犯罪なので、これが戦前の
日本では新聞小説として成立していたことに
驚きを覚えました。
幼馴染みの歌舞伎役者を想い続けている
おせん、おせんをダシに金儲けしようと
企む兄、なんとかおせんをモノにしたい男共
などが入り乱れる話ですが、いわば江戸の
情勢が安定しきっていた時代の
ほのぼのした情景を味わえる小説。
何より、雪岱の余白を大胆に
生かした絵面は一枚一枚が実に美しく
江戸時代のファンタジーに浸れます。
そして雨と雨傘の描写が素敵。
江戸の女といえばやっぱり雪岱
シンプルな線描に心が掴まれます。
DJ KAZURU
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