中上健次 著
「火まつり」拝読。
ペーパバック仕様で
復刊。このシリーズ廉価版で
ありがたいです。
映画化の際のシナリオ版も同録。
中上健次得意の
紀州の荒くれ男が主人公で
海や山、土地の自然と戯れるような
生き方が描かれる小説。
まるで聖なる血が通っているように
他の男とは違ってみえる男は
血縁に縛られ、地元に縛られ
やがてある事件がきっかけで
親族を集め猟銃で皆殺しにするという
結末。
ここに至るまで一貫して
中上健次ワールドと言ってもいい
男女の関係や、男が憧れる男っぷりの
描写に満ちていて、この恐ろしい結末も
神話の出来事のように
すっと入ってくる物語です。
それだけに
この小説が昭和55年に起きた
実際の事件を下敷きにしてると知ると
驚愕です。
wikiなどでも
事件の概要を知ることができますが
土地の様子はまさに中上健次の世界
そのままで、作家としてこの事件を
書かなければと思った気持ちもわかります。
ただ、実際の加害者は
小説の主人公にとうに
神仏に守られたかと見まごうような
荒くれではなかったようです。
もし自分の子供も、女房も
親兄弟も猟銃で撃ち殺すなら
それが熊野の一角であるなら
こんなストーリーでなければ
ならないだろう、と
誰もが説得されてしまう
この尊い物語の世界。
DJ KAZURU
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