竹本義太夫の物語が
小説になってましたので
「竹本義太夫伝 ハル、色」
岡本貴也 著、拝読。
わたくしは今の浄瑠璃スタイルを
確立した太夫の祖ともいえる
竹本義太夫より、心中もので大ヒットを
飛ばした作者の近松門左衛門のほうが
興味あるのですが
竹本義太夫の道のりがわかって
面白かったです。
百姓の身分ながら
浄瑠璃が好きで、声の良さを見込まれて
弟子入りできたものの、弟子時代は
不遇に次ぐ不遇を重ねたあたりなど
随分苦労の多い人だったんですね。
現在の太夫は小さなこと腰掛けを使い
指を立てた正座で
着物の腹に落としという重りを入れて
ぐっと締めているのですが
それを開発したのも竹本義太夫。
知りませんでした。
彼の一座の人形遣いの工夫で
人形の手が長くなったり
女の人形に足をつけたりということも
できたようです。
作中で「浄瑠璃は情」ということを
何度も義太夫が言うのですが、これは
竹本住太夫がよく言ってたことを
取り入れた感じですかね、住太夫さんの
本にも出てきます。
「情」とはなんぞや
近松門左衛門×竹本義太夫のタッグで
興行した曽根崎心中は
受けに受けただけではなく
心中ブームを引き起こしたのは事実なのですが
義太夫が何十年と思い続けてきた人の
娘が心中ブームにのって
心中してしまったという物語は
史実ではないかもしれませんが
悲しいことですね。
竹本義太夫も、自分の興行が
成功する影で何人もの男女(ここでは
90人となっています)が
命を落としたことに複雑な気持ちを
持ち続けたことでしょう。
当時実際の事件からひと月で
興行にかかったという心中ものは
私も大好きですなんですけどね。
この九月も国立劇場では文楽公演があります。
竹本義太夫がいなければ
この楽しみも違ったものになってたのでしょう。
DJ KAZURU
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