京都を舞台にした短編集
赤江瀑 著
「狐の剃刀」拝読。
すでにほかの選集で読んでいたものも
ありましたが、やっぱり最高でした。
赤江瀑の京都は
京都の名所名物を書くのではなく
そこに生きる人だけが持つ
業を書いていますからね。
お茶屋の女将
料亭の板前
かつて御所に使えた公家の末裔。
誰もがこの土地に生まれたことで
抱えてしまった苦悩でドラマは始まるのです。
もう何度も読みましたが
「緑青忌」はすごい話です。
たったひとつの水鉢から
ここまでの物語が膨らむなんて
「桜姫東文章」もびっくりでしょう。
表題作の「狐の剃刀」は
毒を持つ草花ばかりを絵に描いて
想い人へ送った娘の心が
屏風になって閉じ込められているという
怨念を感じるような話です。
赤江瀑の描く女は
一人の男を生涯かけて思い続ける
人が多い気がしますが、それは
必ず何か鍵となる物介在してる。
たったひとつの扇や屏風絵、水鉢。
そんなものが人の人生を狂わせる、それが
また当然のように感じてしまう
赤江瀑の世界にいつまでも
浸っていたくなります。
DJ KAZURU
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