「平成怪奇小説傑作集1」
東雅夫 編、拝読。
赤江瀑の未読作品「光堂」が
目当てでしたが、収録作品の
怖さのレベルと質の高さに
思わずすべて読んでしまいました。
東雅夫氏のさすがの選択ですね
良い編集者って本当にありがたい
存在です。
とにかく本が好きでいい作品に会いたくて
日頃から古書店まわりをして
めちゃくちゃお金を使ってるんだろうな
と想像できます。
吉田知子という作家は
知らなかったのですが、平凡に
生きていると思っていた自分が
いつのまにか
お供えの対象になっているという
不思議な物語で、素晴らしい短編です。
もっとも強烈だったのは
坂東眞砂子の「正月女」。
農家の嫁として5年目の主人公は
まだ30歳になるかならずやなのに
難病が見つかり長くはないと
宣告されている。
最後の婚家での正月を迎えるために
一時退院するのだが、自分の死後
夫はすぐに再婚するであろうことを
察して、自分の死の予感よりも
そのことが辛くなっている。
そんなとき姑は
彼女に、この土地では
正月に女が死ぬと土地の女が
七人も死んでしまうという言い伝えがあるから
絶対に正月に死ぬな、と
言うのである。
主人公はあんまりなことを
告げる姑を憎みつつ、もし
正月に自分が死んだら
誰を七人連れて行こうか、と
考え出す。
しかし、現実に正月に殺されたのは
別の女だった、そして・・・
という話ですが、坂東眞砂子の
文章で読むと、怖すぎるのです。
使い古された言い回しですが
一番怖いものは
異形のものや妖怪などではなく
人の怨念、いってみれば心なんですね。
他にも、篠田節子が書いた
貧乏国に成り下がった日本の
近未来で、死ぬに死ねない老人が
終の棲家のユートピアに行けたかと思ったら
そこは放射能汚染された地域で、肉体を
蝕まれてあっという間に死んでしまう
「静かな黄昏の国」など
名短編がぎゅっと詰まってました。
DJ KAZURU
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