池波正太郎は来年で
生誕100年だそうです。
エッセイ集「男の作法」の
大ファンですし、ドラマ
「鬼平犯科帳」も好きですが
小説をしっかり読んだことって
なかったかもしれません。
タイトル作の「錯乱」は
昭和35年、第43回
直木賞受賞作だそうですが、他のものも
同時期の作品でしょうか
書いてなかったので判然としません。
隠密として生まれ、
ただただお役目のために
自分を殺している男の顛末を描いた
「錯乱」をまず読んで
なんて小説だ!
と、びっくりしました。
時代小説と言っても、ここまで
当時の男の生き方を細やかに
書いているとは、恐れ入りました。
すべて高品質の小説でしたが
「秘図」がとても好きです。
女性と深く交わることを
欲しながらも、立場上それもできず
火付盗賊改として人から尊敬され生きる
男が、夜な夜な書き溜めている
誰に見せることが出来ない絵。
男女の交わりを丹念に
誰にも知られず書き溜め、それを
ただひとつの歓びとした男の
最期。
ラストの展開も素晴らしく、ああ
人間とはこうしたものか、と
しみじみしてしまいました。
春陽文庫の復刊シリーズとして
続編も刊行されるようです。
正直なところ
舞台を江戸期に設定しているだけで
人物は現代と変わらないような
時代小説も増えています。
池波正太郎はまことに江戸の人間を描き
かつ、普遍的な人間の有り様を
教えてくれます。
けして難しくない文章も、実に
練られていると思いました。
DJ KAZURU
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