「自転しながら公転する」
山本文緒 著、拝読。
冒頭
ベトナムで結婚式に臨む
新婦のモノローグで
異国での生活への
シンプルな決意が述べられる。
そこから長く続く本編は
全く異なる関東の地方の
アウトレットで働く若い女性の
恋愛や家族の物語になり
はて、この話が
どうやって最初のエピソードに
繋がるのかと思い最後の最後まで
興味を引っ張られました。
よくある
「最後の三行でどんでんがえし」的な
安い構成ではなく、さすが
山本文緒という小説でした。
私も若い頃は
彼女の小説が大好きで
「恋愛中毒」とか読みふけったものですが
晩年になっても山本文緒は
恋愛を書いていたのですね、早すぎる
晩年に。
これは確か最後の長編小説です。
いわゆる適齢期女性が抱える
結婚、恋愛、貯金
職場の人間関係、親の世話
など、将来の不安がてんこもりで
ここを乗り越えるなんて相当
技術のいることなのではないかと
心底つらくなって
ため息が出ました。
日本は能天気に恋愛できる国じゃ
とっくになくなってる。
ベトナムで結婚するのは
本編の主人公の娘だったのですが
「ちょっとでもしくじったら
揚げ足を取ってくる。
顔だけは笑っている狭量な人たちに
囲まれて生活する感じ」
から逃れるには
外国にでも生活の場を求めるしか
ないようにも思われます。
恋愛なんか楽しめるほど
未来に希望はないし。
でも誰かと連帯して生きていきたいと
思う心は無くならないのでしょうね。
・・・
別にそんなに幸せになろうと
しなくていいのよ。
幸せにならなきゃって思い詰めると
ちょっとの不幸が許せなくなる。
少しくらい不幸でいい。
思い通りにはならないものよ。
・・・
DJ KAZURU
Add A Comment