「春いちばん」
玉岡かおる 著、拝読。
キリスト教伝導を神戸のスラム街で
辛抱強く行い、大正から昭和初期にかけて
労働者の権利や
庶民の暮らし向上のために
身を捧げた賀川豊彦。
の、妻の視点から書かれた小説。
私は自分自身も求道というか
キリスト教について勉強したくて
聖書を学びに教会へ通ったことがあることから
他人の求道にも興味があるので手に取りました。
賀川豊彦の妻となったハルは
家の事情で14歳で女中奉公、その後
工場の女工となり、学問から遠ざかったまま
大人になりますが、伝導をしていた
賀川豊彦にひかれて、同じく貧しいものの
しもべとなる人生を歩んだようです。
これを読む限り、神の教えに沿って
というより、賀川豊彦の魅力に
取り憑かれて、彼の支えとなるように
頑張ってきたら、いつのまにか
女性運動家になっていた、というほうが
近いようです。
同世代には平塚らいてうや
市川房枝もいましたが、ハルは
あくまで男性の領分を侵さず
女性も学び、知識を身に着け
生活を豊かにしていこうという
考えだったようです。
この時期は
平塚らいてうが新婦人を結社し
参政権獲得などに挑みますが、
実際は女性が学ぶ機会はごく
一部のものにしか与えられなかった時代です。
こういう人たちが切り開いたから
今の自分もあるのだとしみじみ思います。
貧しいものは更に貧しくなり
労働意欲もなくなり、家庭の女子は
売り飛ばされる。
そんな世の中を変えたいと、獅子奮迅の
賀川豊彦は私財を投じて活動したわけで
実に立派なのですが、現実は
妻のハルが面倒くさいことを一手に
引き受けてたのですから、そう考えると
これほどの人さえも、女は女中として
扱って良いものと考えていることに
恐ろしくなりました(もちろん
賀川豊彦にそのような
意識はなかったでしょうが)。
ハルも令和の時代に生まれていれば
本当に自分のためだけに学び
能力を発揮できたでしょう。
誰かの提案に乗るのではなく
自分だけの道を歩けたはずです。
家族のために学校をやめて働く
また、仕事をやめて家事や介護をすることが
立派な心がけだともてはやすような
風潮だけは今も変わらずあるような気がします
女性限定で。
まったく
女性が学んだり自分のしたい
仕事につけるなんて、ここ
数十年のことですよ。
制度だけでな、真実女性の
自由が保証されるのは
いつのことやら。
ところでこの本を出してる
家の光協会って新興宗教かと思ったら
農協の出版部門なんですね
失礼しました!
DJ KAZURU
Add A Comment