名作「砂の城」

日本女性全員知ってたかもしれないけど
一条ゆかりの「砂の城」って
世界文学全集に入れてもいいような
名作だった。

「有閑倶楽部」とか
一条ゆかり作品
大好きだったのに、この漫画を
なぜか若い頃に通過しなかったのだよな。
1980年の作品なのですが
一度も読んだことなかった。

フランスを舞台に
捨て子とお嬢様の恋愛を皮切りに
映画「ひまわり」のような
行方知れずとなった恋人探しや
ひたすら待つ女が描かれる一方で
少年のビルドゥングス・ロマンでもあるし
老いても何年も思い続ける愛の形を見せたり
少女ならではの
無垢で残酷な愛の形も出てくる。

他にも
戦争で引き離された
身分違いの恋人が出産していて
運命の祖父と孫との出会いがあったり。

全寮制の男子校で
少年同士のいざこざもあり。

夫を愛しすぎたゆえに
精神に異常をきたし修道院へ
入る母親、その母を憎みきれない息子とか。

幾層にもあらゆる人間の立場、そして
感情という感情が
描き出されていて、ストーリーが
最高に面白い。
詰め込まれたあれやこれやが
なんの不自然さもなく
纏まっていることにもびっくりです。

嵐が丘と
カラマーゾフの兄弟と
ボヴァリー夫人と
いろんな名作を一気に読んだような
充実感でした。

最高の幸せが見えてくると、いつも
あっという間に崩れ去って
人生のどん底に突き落とされる主人公。

のちの韓国ドラマのような
展開を「砂の城」に例える詩情。

池田理代子先生も20歳代で
ベルばらを書いていますが
一条ゆかりも
こんな作品を残してたんですね。

日本の70年代80年代の少女漫画って
本当にレベルが高い。
しかも人生に夢が持てる
美しい画です。

文庫版で手に入れました。

作者あとがきでは20歳代の作品だったので
画力の低さが目立つと書いてありましたが
すごく綺麗ですよ。

もうこの漫画は日本の
文化財にしたら?

DJ KAZURU