金井美恵子
金井久美子姉妹の新作エッセイ集
「シロかクロか、どちらにしても
トラ柄ではない」拝読。
相変わらず気の利いた毒舌
クレバーなの観察眼。
日本の老いた女の中には
こういう頼もしい人たちがいるのだと
思い出させてくれる存在です。
こういうものを読んでいると
申し訳ないけど
男のほうが馬鹿なのかなと
思っちゃいます。
昔は町にあったもので
今はとんと見かけないものとして
手芸品店のエピソードが出てくるのですが
私の子供の頃には
かろうじてあったのを思い出しました。
今考えると
余裕のある家庭の奥さんが
自宅の一角を改装して
小さな手芸品店を出していたと
思われるのですが、小学生の私には
色とりどりの刺繍糸
フェルト生地の鮮やかさが
大変美しく思われて
簡単な刺繍などをするために
しょっちゅう通っていたのでした。
その店主というか奥さんは
レース編みが得意で、手芸というものに
めちゃくちゃ関心を持っている私に
教えてあげましょうかと声をかけてくれたのです。
私はこんな繊細で美しいものを
自分も編めるようになるのかと
興奮して、次に来るときは
教えてもらう約束をしました。
自宅でそのことを
祖母に報告すると
なぜか祖母は
「他人様に教えてもらうことはない
私が教えてあげるから
手芸品店に行ってはならぬ」
と言い
もっさりした
古い毛糸と編み針を出して
さあ、教えてあげるよと
私に言いました。
それは手芸品店の奥さんが
手にしていたものとは全く違い
細くも白くもない糸で(毛糸だから)
私はがっかりしましたが
結局は祖母に編み物を習い
手芸品店へは行かなくなったのでした。
ずっと忘れてたけど
今の自分ならレース編みへの憧れを
毛糸で誤魔化すことはしないだろうな。
毛糸に罪はないけど、あの
もっさりした夢のない色の毛糸は
嫌だった。
DJ KAZURU
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