金原ひとみ
「fishy」拝読。
タイトルは
胡散臭い、のような意味かな。
この作者は文章のスピード感がすごいので
高速ドライブみたいな感じで
読みます、それが気持ちいい。
20代後半から30代後半の
それぞれに男や家庭のことで
悩んでる女性3人の話。
主に不倫、というか
結婚してるのに夫が女を作ったとか
自分以外にパートナーがいる男を
好きになって、慰謝料請求された、とか
そのあたりが軸になって来ますが
自分のことを語っているようで
けして真実を語らない
女がひとり混じっていて、ちょっと
ホラーなのが面白い。
付き合ってる人がいるのに
他の人を好きになるなんて、実に
よくある話なのだろうけど
その時の感情を身に沁みるような
言葉で表現していて、痛快。
男性がこの小説を読んだら
わがままな女たちの話で不愉快だと
思うんじゃないかな。
私は、これを読んで登場人物の話の
3人の誰か一人にでも共感できる男が
いたら嬉しいと思うけど。
特に仕事と子育てと
美容外科通いでフル回転してる
最年長の弓子は夫に
離婚を突きつけられてしまうのだけど
彼女のキャラクターが最高だった。
結局夫は不倫相手の若い女の
束縛に耐えられなくなり
家庭に戻ってきて
「この家に帰ってきたとき
すごい開放感があったんだ。
今の生活がキツイんだって自覚したよ」
と、ぬけぬけとついこの間まで
離婚したがっていた妻に言うのだけど
弓子は心で
「なぜそんな状況に陥るのか
教えてやろうか。
お前らが浅はかな恋愛感情に
突き動かされて生きている
下等動物だからだ」
と、つぶやくのである。
・・・
一週間前、
夫にこの女と見比べられたときに
見劣りしたくないという一心で
レーザー照射とイオン導入を受け
八ccのヒアルロン酸を注入してきた自分も
信じられなくなる。
私は夫を愛しているでも、
失いたくないでも、
浮気相手の女が憎いでも、
浮気相手も女を殴りたいでもなく、
ただひたすらほんの僅かでも
惨めな思いを回避したかっただけなのだ。
・・・
DJ KAZURU
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