
有吉佐和子単行本未収録作品集
「挿絵の女」拝読。
戦地で記憶喪失となった
挿絵画家がなぜかいつも見知らぬはずの
同じ女を絵にしてしまう表題作はじめ
有吉佐和子の中間小説とでもいうべき
面白い短編が詰まってます。
どれも
着物や伝統芸能に関心を持つ
人にはたまらない世界で、
未亡人が死期をまえに心の内を
孫に語る「死んだ家」で
自分が蔵に蓄えた財産など何もない
あるのは硯屏(硯の前に立てるミニ屏風)ばかり
と、告白するところなんか
ぐっと来ました。
非常に心に残ったのは
老いた日本舞踊家が
道成寺をアレンジして新作の
「無限道成寺」を歌舞伎座で披露する
「鬼の腕」。
かつて可愛がっていた息子の同級生
との恋の火種を燻らせたままの
舞踊家は、生涯老女の役は踊らないと
決めていたが、骨折したことから
片腕で踊れる「茨木」を踊る。
この舞踊家の若さへの執着と
老いを受け入れなければならない
事実とのはざまで揺れる心が
巧みに書かれていました。
娘道成寺も茨木も
長唄ではポピュラーな曲。
私もこれらの曲に触れているので
曲を聴きながら読んでいるような
気持ちになれました。
渡辺の綱とかいっても
現代の人にはわからないかもですが
長唄では「綱館」「茨木」という
演目で親しまれています。
道成寺で若い娘の恋心を
魅せた舞踊家が
腕を切られて復讐に燃える鬼を
演じるのですからすごい振れ幅。
この舞踊家は
解説によると
有吉佐和子が親しくしていた
初代吾妻徳穂とイメージが
重なるということです、
なるほど、なるほど。
DJ KAZURU
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