「西洋菓子店プティ・フール」
千早茜 著、拝読。
最近の直木賞で話題になった作家さんなので
何か読んでみようと、これを選びました。
すごくライトで
読みやすい。
悪い人が出てこないし。
街のお菓子屋さんは
特別な勉強はしていないけど
経験値で最高の生クリームを
作ることができる。
そこの孫娘は本格的なフランス菓子を
作る。
それを応援する恋人。
憧れる同業者。
なにげなく食べる客。
夫の不倫相手に乗り込まれて
大量のシュークリームを買って
食っては嘔吐する近所の主婦。
色々出てくるのですが
それぞれの生活、感情が上手に
描かれていて面白かった。
ちょうど
「洋菓子店コアンドル」という
日本人がやってる
本格フランス菓子店の映画を
見たばかりなのですが、フランス菓子って
食べられる芸術で複雑な構成のものも
多いし、味わいが人間関係に通じるというか
想像がふくらむものでは
あるのですよね。
小さなものなのに
食べると脳天にビビビと響く
衝撃を受けることもあるしね。
銘菓を食べ歩く男子が
菓子店のオーナーに差し入れたのが
シンプル極まりない、駒込の
揚げ饅頭店のどら焼き風の
「南蛮焼」だったところが秀逸。
あれは本当に
なんてことない菓子なのだけど
美味です。
・・・
なんの用事でくるかは、わかっていた。
電話の声から、若いだけで
品も教養もない女であることも見抜いていた。
手を汚さずにシュークリームを
食べると方法なんてきっと知らないだろう。
安っぽいピンクの唇と爪がクリームで
汚れてしまえばいいと思った。
(中略)
女のかたわらに置かれたベージュ色の
バッグの端が擦り切れていた。
見るからに合皮だった。
こんなみじめな女がさも対等な様子で
わたしの前に座っていることに
怒りが込み上げた。
・・・
DJ KAZURU
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