「兄の終い」
村井理子　著、拝読。

翻訳家として活躍中の村井理子は
家族にまつわる出来事を
次々にエッセイに書いていて
これが面白い。

私が知る限り
双子の息子たちのこと
痴呆が始まった義父と義母の
介護のこと、そして
長年疎遠だった実兄が突然死したために
手続きの一切をやることになった
その顛末。

兄弟でも仲がいいとは限らないし
助け合わなくてはいけないわけじゃない。

しかし、村井理子は
兄に恫喝され
泣き落としされ
あれこれ言われ続けて
金を貸したり
住居の保証人になったりするのです。

そして
ある日警察から
お兄さんが自宅で亡くなりました、と
電話を受けて
遠い地方まで出向き
もともと荒れてた上に
血まみれになったアパートを掃除し
兄の子供を兄の元嫁に引き取ってもらう為
手続きをし、葬儀を出すのです。

読んでいると
どちらかというと迷惑をかけられた兄なのに
迅速に行動し、できた人間だなと思うのですが
共感する点として
ご遺体に敬意を、死者を敬う、という
姿勢なのですね。

私も数年
葬儀業界で毎日遺体を見ていたので
どんな犯罪者だろうと
悪人であろうと
ご遺体になったからには
大事にされるべきだと思うのですね。

村井理子は親族でもあるし
きちんと全てきれいにしてあげて
火葬まで出木たのは良かったはずです。
実際本人も
すべてを終えたあと兄に対して
優しい気持ちになっているのが分かります。

私が戦争嫌いなのは
ご遺体への経緯も何もなくなっちゃうから
なんですよね。

軽く扱われる
物のように扱われる
ご遺体っていうのはつらすぎるんです。

正直、早くいなくなってくれないかな
とすら思う憎い人間もいますが
いざその人の訃報に接したら
頭を垂れて
手を合わせると思います。

DJ KAZURU