平野啓一郎って
最近は読んでなかったのですが
遅ればせながら
「本心」拝読。
テーマと、描かれる近未来のリアリティ
どちらも興味深くて、さすがでした。
数十年後の日本は
格差が激しくなっており
富裕層は発達したVRを駆使して
寒暖差を感じる外出など
面倒なことはすべて
人を雇って解決している。
一方貧しい層は
彼らの手足となって
ヘッドセットをつけながら
指示されるままに
買い物をしたり配達をする
リアルアバターになるのが仕事。
貧しい彼らの楽しみは
アバターの形で仮想空間を
徘徊することだけれど、格好いい
アバターには100万からの値がついていて
とても手には入らない。
貧しい層は働けなくなれば
たちまち生活に困るし、介護を受ける
余裕もないので
「自由死」という名の安楽死が
認められてる社会。
主人公は母子家庭で育ち
高校中退。
裕福ではないけれど
働いているから住むところはある。
自由死を希望しながらも
ドローンの追突事故で
事故死した母親が存在しないことに
耐えられず
母親のバーチャルフィギュアを
300万で買った。
AIの学習能力のおかげで
ヘッドセットをつければ
見える「母親」はだんだんそれらしくなるが
その母親の発する言葉は【本心】なのか。
そもそも
死んだ母親が過去に
息子に語りかけた言葉は
【本心】なのか。
友人に打ち明け話として
母親が語ったことは【本心】なのか。
日本語が流暢ではない
人が一生懸命紡いだ
言葉から【本心】を読みとることは
できるのか。
本心、という言葉が
あらゆる場面で登場し、そういえば
本心て、どういう条件があれば
本心ということになるのだろう、と
考えさせられます。
それにしても
ここで描かれている格差問題は
もう目の前まで迫っている気がします。
最近こういう小説を読むと
悲しくなるのだよね。
ああ、自分も
自由死するしかなくなるのかなあと
そんな想像をしちゃうので。
というか
日本の行き行く先は
こいういう惨めな社会にしか
もう成り得ないなって感じてしまうことに
がっくり来るのかも。
この小説は希望に満ちた
終わり方なのだけどね。
DJ KAZURU
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