
「肌色の月」
久生十蘭 著、拝読。
日下三蔵の企画で
復刊した短編集。
冒頭のバーでの殺人事件に
巻き込まれる人々の
それぞれの心情を描いた「金狼」も
女性タレントが自分はガンだと確信し
死に場所を求めて殺人事件に
巻き込まれる表題作も
いまひとつピンときませんでした。
が、肌色の月はあと一回で
連載が終わるというところで
久生十蘭が癌に倒れて
夫人が結末を書いた小説だったのでした。
久生十蘭が喉のつかえを
うったえ、癌だと判明し
書きたいが書けない、胃瘻になっても
体調が悪くて書けない。
癌だと信じて自殺を決意する
女の話を書いてる時だというのに
自分が癌で最後まで書ききれない。
その顛末が夫人の手で書かれたものが
巻末で読めます。
昭和32年、肌色の月の単行本あとがき
として久生幸子の名で書かれてますが
この闘病記が
ちょっとすごいのです。
癌に苦しみつつも
希望を失わない夫の姿を
真正面から捉えており
こうして苦難の日々を文章化するのは
精神的につらかっただろうと
推測されます。
が、この夫人による
闘病記があるからこそ
「肌色の月」は完成された作品となった
そんな感じです。
DJ KAZURU
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