「映画極道」
五社巴 著、拝読。
五社英雄の映画が大好物なので
娘さんによる五社本を読んでみました。
これまでも背中の彫り物の
エピソードや、女優に刃物突きつけ啖呵切った話とか
色々知ってるつもりでしたが
娘の話は非常に興味深かったですね。
生きてれば、もう90歳を超えてる
五社英雄。
60歳代の早死だったから
伝説になってしまったところもあるかと思います。
開局当時のフジテレビに
ニッポン放送から出向する形で
ドラマを撮るようになり評価もされ
色々あって会社を去っても
50歳から約十年の間にヒット作を
12本も撮った五社英雄。
私の大好きな、
鬼龍院花子の生涯
陽暉楼
吉原炎上
櫂
どれもこれまでの文芸映画の
常識を超えた映像で
女の情念に迫った作品です。
刀で人を斬るときの
効果音を生み出したのも
五社英雄ですからね。
異端であり、革命児であり
ってところでしょうね。
家庭では古い男女観そのままで
男は稼いで、女が家を守る
そんな主義を貫いたようですが
この時代の人ですからね。
演出の時
カラミシーンもすべて
まず自分でやって見せる。
まず自分で恥をかいて見せることで
人はついてくるんだ、なんていうのも
昔気質が感じられる発言です。
飲みに行けば自腹でみんなに
ごちそうするし、人の信頼を得て
いい映画を撮りたい、の
一心だったようです。
実際に公開当時の評判よりも
現在のほうが高く評価されてます。
彼は本物の映画監督だったのです。
私が本書で一番驚いたのは
五社英雄50歳、娘も大学生になり
特注襖を入れた家も建て
仕事もガッツリやっていたときに
女房が歌舞伎町のホストに入れあげ
億単位の借金を作り
気づいたときには
預金もなく
家も抵当に入りすっからかんになってた
という話です。
ここから女房の失踪
娘の交通事故
自身の銃刀法違反、と
畳み掛けるように悪いことが
起きるのですが
こういう女房の変化に気づかない
五社英雄にもびっくりです。
外で無頼だったから
家庭内の爆弾に気づかなかったのか…
兎にも角にも
ここから這い上がっての
名作を撮りまくったわけですから
やっぱり凄い人ですよ。
ところで鬼龍院花子の生涯が
最初は梶芽衣子が映画にしたいと
言っていたという話は知ってたのですが
五社英雄で撮ることになったときの
主演候補は大竹しのぶだったそうです。
大竹しのぶが断ったため名もない
夏目雅子になったそうですが、今となっては
大竹しのぶではあの映画
考えられないですもんね。
夏目雅子のキャスティングで
本当に良かったと思います。
何度見てもいい映画。
DJ KAZURU
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