「夢見鳥」
中村吉右衛門 著、拝読。
日経新聞
「私の履歴書」の連載が元になった
本のようですね。
更にインタビューで
芝居のそれぞれの役についての
キモを語ったものが加わっています。
巻末には上演記録も網羅。
吉右衛門さんの文章は
いつも人柄が伝わるよう。
誠実で、真剣で
奢りがなく、芸術への
憧れに満ちている。
産まれる前から
養子に出され、名優と言われる吉右衛門の
二代目を次ぐことが決められた人の
人生観とは、どれほど
複雑なものだろうかと切なく思う。
実際、常に深みのある
歌舞伎役者だった初代にも
実父にも実兄にも
自分は遠く及ばないという
気持ちをずっとかかえ、それでも
精進して精進して
賢く誠意を持って歩み続け
二代目吉右衛門としての
プライドのある
芸風に至ったわけです。
誠実に芸に向き合ってる人が
結局はいちばん輝くと感じます。
本人はフランス文学や
絵画が好きで、歌舞伎をやめていっそ
絵の勉強をフランスでしたい、と
思ったこともあるそうですので
苦悩の多い青春だったのかな、と。
藝大の先生に絵を見てもらえることになって
キャンパスに足を踏み入れた瞬間
心が躍った、と
ありますが、分かります。
藝大に聴講生の制度はないのかと
聞いたら「無い」と言われがっかりしたという
エピソードは他人事ではなくて
私も同じ経験がありますので。
亡くなったのは2021年。
もっと舞台を観たかった。
DJ KAZURU
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