
「ハミンバード、つまり
ハチドリがこーやって羽を広げてるところ」
ってマスターが説明してくれた。
棚の上の方に置いてあったときは
上半分しか目に入らず
帆立のような貝殻柄かと思ってた
ウェッジウッド。
・・・
吉田修一
「湖の女たち」拝読。

珈琲舎蔵のマスターに
映画がよかったから、と勧められて
読んだ一冊。
老人介護施設での
100歳の入所者が不審な死を遂げる
オープニング。
戦時中入所者が
満州で行ってきた秘密の出来事が
原因の殺人なのか。
それとも製薬会社の
非人道的な治験が原因なのか。
警察の犯人探しに
うってつけの介護士への自白強要や
刑事にねじれた愛情などが絡んできて
面白く読みました。
これは
介護士の男が「役に立たない人間ども」を
施設で大量殺戮した実際の事件が
芯になっている小説なのですが、やはり
あの相模原の事件を知った時
作家ならば、この先こういうことが
起こっても不思議はないと考えたでしょうね。
そのもっとも悲しい影響力が
少女や少年に及んだら。
つらい未来を描いた小説でした。
今、優生思想を掲げて殺人に及べば
大抵の人は殺人者を非難するでしょうけど
人間を種類で分けて
ある種の人間の命は粗末に扱ってもいいと
決めつける人間は、突然モンスターとして
現れたわけじゃありません。
昭和10年代にもそういう思想を
蔓延させる日本人がいて、満州で
人体実験を行ったわけで、それと
何が違うのかという見方もできます。
人間てそもそもねじ曲がった
恐ろしい生き物じゃないのか、と
本来なら目をそらしたいところを
真っ向から見つめた小説でもあります。
ここではジャーナリストも
刑事も長いものに巻かれる話ばかり
出てくるのですが、最後の最後に
どちらからも真実を追い続ける
人物が書かれているのに救われます。
警察小説も多くは
上の命令とかで動けない話ばっか
出てきますけど、そういう社会に対して
希望を持ちたい、抵抗する人も
誰かいるだろうって
私はよく思うんです。
吉田修一も同じなんじゃないかな。
DJ KAZURU
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