まっすぐな道でさみしい
町田康
「入門 山頭火」拝読。
伝記なのか小説なのかも
最初わかりませんでしたが
町田康✕山頭火、というだけで
手にとって、これは
いい組み合わせだな、と感じました。
特に山頭火に詳しいわけでもなかった
町田康が
これだけは誰でも知ってる有名句
「分け入っても分け入っても青い山」
を手がかりに
山頭火の人生をたどり、句を読み解く
試みですが、私の直感は正しくて
はっきり言って最高でした。
山頭火は良いトコの生まれで
学もあり語学も堪能なのに
安定した人生に居心地悪くなって
最終的に乞食同然の旅人になって
句を読み続けた人でした。
町田康も
パンクロッカー時代に
お金がなく、人生を憂えたことがあるので
似たような感情を持っていたことが
あると言えます。
わけいってもわけいっても…
この読み解きを山頭火を知るにつれて
どんどん深めていく町田康。
その
理解の仕方がプリミティブなんだけど
素直で素晴らしくて、ああ
文章に触れてなにかを感じ取るとは
こういうことか、と読んでるこちらが
光に触れた気になります。
もちろん、他にも
山頭火の句はいっぱいあるわけで
いくつか解説というか
超訳してくれるのですが
それらもことごとく面白い。
韻を踏んでるわけでも
七五調でもないのに
リズミック。
音楽的な文章の洪水。
文章なのになぜか
身体性、とか言いたくなるのですが
町田康の文章はいつもそんなふうに
肉体に訴えるところがあるのです。
この特殊さ、気持ちよさを
抜書きしてみようと思ったのですが
どこを切り取っても短いとその良さが
伝わらない気がして…逆に
どの箇所でもいいから2,3頁読んで欲しい。
眼の前で語りかけられているような
ちょっとおちょくったような
くだけた調子なのですが
語ったことを文字に起こしているのとは
違う文章。
音楽のようにビートを感じるけど
もちろん文章には違いなくて
ひたすら気持ちいい。
山頭火の自由律俳句まで
音楽的に思えてきました。
しっかし山頭火も
ここまで自分の人生に向き合ってもらえて
泉下で喜んでるだろうなあ。
はっきり言って
だめな人間、と言いたくなる
山頭火の生き方ですが、そのダメさも
町田康は愛おしんでるような
気がします。
金や宿の世話をした友人たちや
何かというと離婚後も転がり込まれた
元妻などは本当に大変だったでしょうが
遠目に見てる分には
魅力的な文学者なんですよねえ。
DJ KAZURU
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