「あなたに語る日本文学史」
大岡信 著、拝読。
ちょいちょい書いてるように
紫式部の時代を思う時
私は藤原公任推しなんですが
この本を読んで
俊成も建礼門院右京大夫も
すごいなって思いました。
大岡信が
うまいこと解説してくれてるんだけど
この時代は
源氏だ平氏だの戦いと
権力の入れ替わりが激しくて
いわば
いつ自分の立場も危うくなるか
命を落とすかもわからない
戦場真っ只中に身をおいてるような
ものだったわけですね、貴族といえども。
そう
貴族文化であることが間違いないのは
節目節目で詠まれる歌というものが
その人の評価に直結してることからも
わかります。
今から考えると嘘みたいですが
まともな歌も詠めないやつに
政治なんかできないし、人間的に
優れてるわけないというのが
常識でした。
戦火の中で自分の命は
いつ果てるともわからない。
しかし今自分が百年前のもの
古今集を諳んじているように
歌ならば自分の死後も残るのではないか。
過去の歌を踏まえたうえで
今の歌を詠む、というスタイルを
続けていけば、自分の歌も
何百年を超えるのではないかという
思想で歌を詠み、歌集を
編纂していったのではないかという話は
非常に腑に落ちるものでした。
俊成なんか90年以上生きているので
天皇の代替わりは10代みてきたことに
なるそうです。
ものすごい荒波を感じた
90年でもあったでしょうね。
同じく建礼門院右京大夫も
安徳天皇の母である徳子に仕えて
若いときは華やかな毎日だったと
思われるけど
戦争で地位が転覆し、徳子は
寂れた大原の奥で尼になったのですから
半端ない死生観を持っていた人と
思われます。
時代を肌で感じながら、がっつり
恋愛を通して歌を詠んだ
大変興味深い人です。
この本は
「日本文学の基本線は詩歌」
というのがベースにあって
大岡信が古事記からわかりやすく
解説している本の文庫復刊なのですが
今の自分にはこの平安期の解説がことに
ぐっと来ました。
他の部分も勉強になること
いっぱい書いてあるのですが
それについてはいずれまた。
・・・
その(歌合せ)判者というのは
その時代を代表する
歌人でなければならなかった。
その場合には、歌人といっても
ただ歌を作るのがうまいだけでなく
古い時代の古歌の優れたものを
全部諳んじている。
また、その古歌が後にどのように
ほかの人によって利用され、引用されてきたか
ということの歴史も知っている。
その上で今、現在眼の前に出された歌が
どういうことを踏まえていて
それについては引用の歴史が
どうなっているかということを
知っていなければならない。
ですから、僕が先ほど
批評家は重要だと言ったのはそういうことです。
創作するだけではなくて
創作したものを見てそれがなぜいいか、
なぜ駄目かということを明快に
言える人が批評家です。
・・・
DJ KAZURU
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