「雪夫人絵図」
舟橋聖一 著、拝読。
なかなか手に入らなくなってる本ですけど
新潮文学全集に入ってたので
ようやく読めました。
意外と中間小説ぽかったです。
戦後間もなく没落華族の
娘、雪夫人は婿養子の
女関係に悩まされてるけど
自分も惹かれている作家がいて、しかし
その作家の母は芸者時代に自分の
父と浅からぬ因縁があり…
そんな話ですが、最初
人形のように神格化された
美しさの人として描かれる雪夫人が
どんどん貧乏になり、妾に苛められ
何もかも奪われ
好きでもない婿養子の子を妊娠し
堕胎したりして
みるみる転落していくのが悲しすぎ。
彼女を見守る存在の
女中や、少年のキャラクターが
面白くてすいすい読みました。
ちょいちょい女というものを
わかりきったような書き方をする
舟橋聖一。
本当の所そんなに
女性のことをわかっていたかどうかは
かなり微妙な気もしますが、そこを
差し引いても大好きな作家です。
文庫復刊があまりないのですが
一定数のファンはいると思うんだけどなあ。
ところで先日
宮尾登美子のエッセイに
苅萱道心の正妻と妾が仲良く
双六で遊んでる姿が障子に映ったら
髪が蛇となり逆立って戦っている
影になっていたという話が
出てきたんですね。
宮尾登美子は長唄の「黒髪」を
語るときに、女の情念とは
そういうものだという例を上げたわけですが
「雪夫人絵図」でも
その例え話が出てきました。
苅萱道心だけではなく
歌舞伎の道成寺を引用するなど
歌舞伎好きにはたまらない描写が
ちょいちょい出るのも舟橋聖一の
特色です。
なんの気なしに読むのなら
こんな小説がいいですねえ。
DJ KAZURU
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