たまたまゲイなどの
セクシャルマイノリティを
考察する本
「慣れろ、おちょくれ、踏み外せ」と
ゲイを狙った連続殺人のレポート
「ラストコールの殺人鬼」を
立て続けに拝読。

前者の方は専門研究者の
森山至貴氏と能町みね子氏が
対話していく中で、例えばLGBTだけではなく
プラスして
どういう人達がいるのかを考え
セクシャルマイノリティが当たり前に
自分らしく生きられる社会を
模索します。

森山氏はさすが知識が深くて
ひとつの講義を受けたくらい
知識が深まりました。

今の時代これくらいの
良識がないと、失礼な発言をしてしまう
恐れもあるんですよね、自戒を込めて。

当事者である能町みね子氏との
対話が深まる中で
そもそもマイノリティが
受け入れられる社会、という
言い方には

「これまでだったら当然
受け入れられないですからねー。
そこをまあ、受けいれようじゃない」

という「寛容」という姿をした
恐ろしい上から目線が
潜んでいるということにも
気付かされるくだりはこちらも
ハッとしました。

世の中には色々なタイプの
性的マイノリティがいて、例えば
これを細かく分類しただけでは
けして分からないことが
いっぱいあるんですよね。
色々な方の文献をひいて分かりやすく
説明してくれる素晴らしい一冊でした。

いっぽうイーロン・グリーン著
「ラスト・コールの殺人鬼」は
ゲイを狙った
連続猟奇殺人についてですが
いかに80年代のアメリカ社会が
ゲイを蔑んでいたかが分かります。

完全に「受け入れられない」社会での
犯罪で、殺されたのがゲイなら
まともに捜査もしない、ゲイは
殴られても蹴られても当然、そんな
被害者たちの人生を振り返っています。

正直ゲイってだけで
こんなに大変なのか、と
驚きました。

エイズに特効薬もなく
未知のもとして恐れられた時代なので
諸悪の根源みたいになってたようです。

実際、彼らはなんの対策もとらず
次から次へと
HIVキャリアになっていくんですよ。

これがとても不思議に思えたのですが
森山氏の話の中に回答が
見つかりました。

【クィア・スタディーズのなかには
このタイプの、どう考えても後ろ向きで
このまま断崖絶壁から落っこちていくしか
ないんだけど、それでもあんたのいる
「安全な」ほうには絶対に向かっていかない
っていう考え方があるんです。
古典的なものだと、ゲイ男性同士が
お互いにコンドームをつけないで
セックスして、そのまま全員で
HIV/AIDSに向かって突っ込んでいくっていうのを
ある種、すごく重要な戦い方として
挙げるような研究が1990年代頃からあります
（中略）
死の危険と恐怖に隣り合わせの快楽を
ともに開発し享受する、というのは
ある意味究極の連帯のあり方ですよね。
この世界の中にある異性愛中心主義や
それに基づく苛烈な差別も
死に向かう意志の前では極めて弱々しいものです。
もちろんこの考え方を
私自身が肯定しているわけではないのですが
徹底抗戦を突き詰めると
行き先が死になるというリアリティには
感動を覚えるところもあります】

この考え方だったのですね。
すべて納得いたしました。

DJ KAZURU