音楽に限らずその歴史を語るときは、
起源から始まり発展していく過程に重点が置かれ、
現在に近づくにしたがって大雑把になっていくものです。
この企画はそれを補完するために、
1990年以降30年間のキューバ音楽に
スポットをあてたものとなっています。
1990年以前の音楽は他の優れた評論がありますので、
そちらをぜひ見てください。
さて、現地のキューバ音楽の最大の特徴は、
大昔のスタイルのソンが、観光客向けの商売とはいえ、
生きた音楽として現存していることです。
この企画で取り上げているキューバンサルサ=ティンバは、
少し前までキューバの最先端の音楽でしたが、
今やこれも海外の愛好者向けとなり、
現地ではレゲトン=クバトンが
若者の音楽の主流となっています。
ところが、外国人が観光で行くと
ソンやキューバンサルサ=ティンバが街で聞こえてきますので、
これがキューバで流行っている音楽だという誤解を
生んでしまうことになっているのです。
キューバ人は世界の流行音楽を聴きたがっています。
そして海外の人はキューバ音楽を聴きたがっています。
それぞれ逆の志向を持っているのですが、
その中でミックスされて新しい音楽が生まれてくるのです。
話は変わり、今はネット上には無限に近い音楽や映像に
あふれていますが、その道しるべがなければ、
素晴らしいものや体系的なものにはなかなかたどり着けません。
この企画はその一つを目指しているところもあります。
コロナ禍が続いて1年近く。早く収束してほしいものですが、
はしゃぎすぎた新資本主義の中で、
世界中の人は「人間の幸せには最低限何が必要か」
考えたのではないでしょうか。
世界の一部の人が富を独占するとどこかで破綻が来るのです。
ところが音楽やダンスにはそれがありません。
それは通貨よりはるか以前から
人類が持っていたものだからと思います。
今回のテーマソングは、
David Alvarez「Mundo Loco(狂気の世界)」。
ティンバではなくヌエバ・トローバのアーティストの曲ですが、
大好きなのでご紹介します。
(2021年1月掲載の為、当時の状況を踏まえた
内容になっています。)
(福田カズノブ)
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