「気散じ北斎」
車浮世 著、拝読。
紗久楽さわの表紙絵素敵。
北斎を主人公にした小説というと
必ず英泉と応為が出てくるのですが
私はこの二人が大好きなのです。
皆川博子の「みだら英泉」なんかも
そうですね。
北斎というとんでもない大きな
才能に惚れてる二人なんですが
同じ絵師として彼らも後世に残った
人たちです。
応為の絵が少ないのは
北斎の名義で世にでたからで、北斎
名義の中に彼女の作品が多く
あるというのが定説。
この小説では
応為が北斎の実の娘ではなく
再婚した女の連れ子で
実は写楽の娘であった、という展開。
もしそうだったら
大事件ですね、そんなファンタジーの
世界に浸れるのも資料があまりない
写楽のことだからこそ。
この世の情景に
興奮して絵に写した、絵師たちの
人間ドラマ、興味がつきません。
・・・
時にはわざと
雨に打たれて雷を見ることも
氾濫した川を見るために
土砂崩れも恐れず
高台に登ることもある。
お栄もそうだ。
いつも北斎の物見についてくるし
火事見物には北斎より熱中した。
・・・
意気を持って描き続けるには
常に昂ぶりが必要だ。
昂ぶりがあるからこそ
梯子を上がり続けていられる。
昂ぶりは時に、名声や地位や金を
得ることでもあるだろう。
息を呑むほどの美しい光景を目にすることも
火事や雷、大風、津波といった
自然の脅威に怯えることも
喜怒哀楽の感情が揺さぶられることも
昂ぶりだ。
だから自分は
描き続けるために
旅を好むのだと思う。
日常から逸脱して
昂ぶりを求める旅に出るのだ。
・・・
DJ KAZURU
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