一番好きな映画
って聞かれると「切腹」とか
答えるんですが、もしかしたら
ガブリエル・アクセル監督の
「バベットの晩餐会」が
一番好きな映画かも。

デンマークの僻地に
老牧師と二人の美しい娘がいて
男たちは噂を聞きつけ求婚するけれど
神に仕える人生を優先させる牧師も
姉妹も彼らを撥ねつけている。

パリ・オペラ座で活躍する
オペラ歌手パパンも娘の
美と歌手としての才能に惚れ込むが
失意のうちに去る。

パパンが、牧師の娘に
モーツァルトの
ドン・ジョバンニのアリアを
指導するシーンがあるので
1787年それより後と分かりますが
実際は1850年くらいなのかと
推察できます。

1871年9月に
バベットが独身のまま老いた姉妹の前に
パパンの紹介で登場し
息子も夫も殺され(当時の
フランス情勢から言って
パリ・コミューンに巻き込まれた
と思われる)行き場がないことから
老いた姉妹の家政婦となります。

バベットにとっても地味な生活が
14年つづいて、やりくりと料理上手な
彼女はこのひなびた村に
なくてはならない人となっている。

そして迎えた
1885年が姉妹の父である
牧師の生誕100年。

この年にバベットはずっと買い続けていた
宝くじが当選し、そのすべてを
使って生誕祭のディナーを
作るのです。

それがパリでもトップの
レストランの料理であったことに
気がつくのは、若き日に
牧師の娘に求婚し
破れ、軍人として出世の道を
歩み続けた将軍だけ。
彼は50年ぶりの再会とともに
この料理に感動してやみませんが
他の列席者にはその価値など
わからず、ただ舌鼓を打つだけ。

1860年ヴーヴ・クリコにはじまり
1845年のクロ・ド・ヴージョが
運ばれ将軍は目を見張ります。

1845年てことは
40年熟成したクロ・ド・ヴージョ
ですからね。

考えに考え抜かれた
最高の料理とワイン。

全財産を投じたディナーを
作り終えたバベットは
すべてをなくしたのではなく
芸術家の魂を完成させたのです。

料理人は偉大な芸術家であり
その最高峰に立ったような
バベットの佇まい。

ここからまた田舎での
地味な生活が続いてゆくけど
こんなに神に愛された人もいないと
教えてくれる映画でした。

本当の成功とは、
真に神に愛されるとは
色々なことを考えさせられる映画ですが
とにもかくにも
料理のシーンが圧巻。

最高の映画です。

こちらは原作読んだ時の感想。

DJ KAZURU