第171回芥川賞は
2作受賞、まずは
「バリ山行」を拝読。
タイトルが何のことかと思いましたが
山登りのルート記録のことを
山行というのですね、そして
正規ルート以外のところを自分の裁量で
分け入っていくことを
バリエーション山行、つまり
バリ山行と言うのだそうです。
山登りとゼネコン下請けの
会社員の日常が混じり合って、自分は
どちらも詳しくないものですから
大変面白く読めました。
勉強になった部分も多くて
新しい知識が身につく読書としての
面白さもありました。
子供がまだ小さく、妻の顔色と
社内のリストラに怯える波多、一方は
上の顔色など考えず会社でも山でも
自分の采配を貫く妻鹿。
妻鹿のともすれば批判の対象になりそうな
バリ山行に波多は憧れるが
その心境が見えるまでには遠くもがく。
山でトラブルに遭い
命の危険を波多が感じるシーンは
脳内で映画が再生されるような臨場感でした。
この物語が終始魅力的で
かつ文章が端正なところが気に入りました。
ふざけたように見える筆名は
尊敬する祖父の名と大事なファミリーの
名前を取り入れてこうなったということです。
母親にもらった「罪と罰」を
中学2年生のとき半年かけて
読み切ってから文学に目覚めたようで
人物的にも魅力が感じられます。
さて、今回も選評が面白かった
芥川賞ですが、なんでも
山田詠美氏によりますと、
選考会直前に
栗原裕一郎なる文芸評論家が
週刊新潮に、あたかも選考委員の
思惑で受賞作品が決まるというような
ことを書いたということです。
山田詠美氏は、当然激おこであります。
だいぶ前ですが、若い女性2名の
同時受賞のときも、話題作りのために
ルックスのいい女性に受賞させたという
記事が出ました。
その時も、いかに選考委員が誠実に
受賞作品を苦しみながら選んでいるかを
主張したのがこの人でした。
少なくとも山田詠美氏は
芥川賞の文学的価値を大事にしているし
そういう選考委員が
しっかり読んでくれてるってことが
大事なのだと思います。
誰かの一声で受賞作が決まるんだったら
もうそんな芥川賞はいらないわけで。
私は毎回楽しみにしてるので
誠意ある経緯で受賞した良作を
また次回も拝読したいです。
DJ KAZURU
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