【この世に幽霊はおりませんが
人の心は幽霊を見せるので御座いますよ。】

京極夏彦で新作歌舞伎
［狐花］をやるというので
(結局舞台は見なかったものの)ノベライズを
拝読。

姑獲鳥の夏、を読んだのが最初で最後の
京極夏彦だった気がしますが、こんなに
読みやすい文章だったのね、とびっくり。

もっと長尺で難解な小説を
書く人だと思い込んでました。

女たちが奪い合っている
美青年の幽霊の話かと思えば
その幽霊は女たちのひとりで
母を殺された復讐をしている。

その母は宮守の娘であったが
信田伝説の
狐の血を引いている家に嫁いだあと
その婚家(人を詛うことを生業としてきた
ので、外法を司る宮守の娘を
嫁にしたらしい)から
作事奉行の地位にある男に
略奪され座敷牢に幽閉され
子を産んだ。

その子どもたちによる
復讐と証が繰り広げられます。

歌舞伎ファンからすると
信太の森の狐の話と、横溝正史の
八つ墓村を混ぜたような奇怪な話です。

歌舞伎だと

恋しくば
尋ね来てみよ
和泉なる

信太の森乃
うらみ葛の葉

で、有名な葛の葉の
産んだ子はのちの安倍晴明ですから
狐花にも
魔除け札が付いていました。

しかし、こういった新作歌舞伎を
観に行く元気はなかった…やはり
時文は古典が好きなのかしら。

初日には京極夏彦も観劇に来られたそうです。

・・・

祈るだけで人を殺せる道理はない
しかし人を不幸にすることはできます。
呪詛とはそうしたもの。

摩訶不思議なものではない。

・・・

DJ KAZURU